平成19年 8月9日  
  ラブホテルの建築を規制する条例等の制定方について  
  小樽市議会議長
見 楚 谷 登 志 殿  
 
  小樽市張碓町550番5号
特定非営利活動法人 かもめ保育園
理 事 長   町 田 幸 作
(電話 0134−62−1284)
 
  1.陳情の趣旨
    小樽市内において、リゾートホテルやビジネスホテルと称して建築許可を受け、実態はいわゆる「ラブホテル」として運営されるホテルの建設が後を絶ちません。先頃、NPOかもめ保育園の近接地(小樽市張碓町554番3〜5)に計画されていたホテル建設は、住民の反対運動の高まりによって建築主が建設を断念しましたが、現行の法令では、今後も同様のホテル建設を規制することは困難な状況です。そこで、小樽市が主体的にこのようなホテル建設を規制するための条例または運用基準を設けることを陳情いたします。


2.陳情に至った理由
 本年4月、かもめ保育園の市道を隔てた真正面の土地にリゾートホテルなるものを建設する旨を株式会社アレンジランド(小樽市花園3丁目10番13号 電話0134-31-4121)が、通告してきました。建築主代理人としての通告でした。
  当園理事会は、建築物の態様・性格は如何なるものか、建築主は誰であるかなどについて説明を求めましたが、同社は「法令には抵触しておらず、説明の義務も意思もない」として当初建築を強行する構えを示しました。
 保育園側からの再三の要求により6月7日付で業者から提示された「説明書」(別添)には、当該建築物は「リゾート型ホテルでレストランをメインにしたいわゆる『オーベルジュ』(料理を重視する小ホテル−引用者注)で宿泊施設が併設されている」とありました。しかし、添付されている設計図によれば、3階からなる建物の1階部分は20台分の駐車スペース(うち12台分は併設の「車庫棟」)、2階及び3階部分は19室の客室となっており、「レストラン」は有効面積が30〜40uの極めて狭隘なスペースを占めるのみで、とても「レストランがメイン」と言えるような構造にはなっていませんでした。さらにすべての客室が2人部屋と思われる面積であることから、これは一般的な意味でのリゾートホテルではなく、専ら異性を同伴する客の宿泊や休憩の用に供する、いわゆる「ラブホテル」ではないかという疑念を強く抱かざるを得ないものでした。
 ホテルの態様について、業者に詳しい説明を求めましたが、「建物は建築基準法や風営法などの法令には抵触しない。」「自社は用地の世話と建築に関わるだけなので、ホテルの営業内容については説明できる立場にない。」と返答するのみでした。ならば、ホテルの建物および営業について責任を持つはずの建築主に説明を求めようと思い、いかなる業者(あるいは個人)が建築主なのかを尋ねても「守秘義務があるので教えられない。」の一点張りでした。
 子どもの健全育成の場である保育園の正面に、このような態様不明のホテルが建設されることは極めて不適切であると思われました。また、当該地域は閑静な住宅地でもありますが、他に営業中の既存風俗施設があることから、地域住民も、この地に更に同種の施設が建設されるならば地域全体が「風俗地域」の趣を呈することになるという強い危惧を抱いていました。そのため、業者側の誠意ある対応と住民合意のないままのホテル建設の中止を求めて、6月16日より保育園関係者と地域住民を中心にホテル建設反対署名を募ったところ、わずか1ヶ月足らずで、張碓・春香地区の人口をはるかに上回る1,757名もの署名が集まりました。その署名簿を添えて7月13日、小樽市議会議長宛に「住民合意のない張碓町『リゾートホテル』建設中止方についての陳情書」(建築主が建設を断念したため8月9日取り下げ)を提出しました。
 「ラブホテル」については、従来「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(昭和23年7月10日法律第122号)によって規制されていますが、その定義はきわめて限定的で、建物の建築時には同法上の規制対象にならないように申請し許可を受け、建築後は「ラブホテル」と何ら変わらない運営を行う実態(通称「灰色ホテル」)が、全国各地で問題となっております。そのため、国土交通省が各都道府県建築主務部長にあてた通達「建築基準法施行令第130条の9の2の『これらに類するもの』の解釈について」(平成17年11月15日 国住街第181号)によって、「ラブホテル」の定義見直しを指示したことを受けて、全国各地の自治体でこのような「灰色ホテル」を規制すべく条例や運用基準が制定されております。道内でも、帯広市が、平成18年4月より「ラブホテル規制に関する運用基準」を設け、通常のホテルと称し実態は「ラブホテル」として営業する建物の建築を規制しております。今回、業者が保育園に提示したホテル建物の設計図面を帯広市の運用基準に照らせば、はっきりと「ラブホテル」と判断され当該建築は認められないということが、今回の問題について取材した報道機関により明らかになりました。(HBC北海道放送「Hanaテレビ」 7月25日放送)
 その後小樽市建築指導課の指導により、ホテルの設計・運営については、有限会社金子総合研究所札幌営業所(札幌市中央区南9条西17丁目1-1エスポワール旭山602 電話011-271-1143)が担当し、ホテルの建築主も伝えられました。しかしながら、業者側の「本来説明の義務なし」の姿勢は変わらず、小樽市建築指導課の尽力により設定された保育園関係者および地域住民に対する説明会についても、「マスコミに取材されては困る」という業者側の一方的な理由で、直前になって取りやめになりました。
 この間、かもめ保育園は、小樽市に対し、業者側に近隣住民との誠意ある話し合いを促し合意の達成を得るまで着工しないよう指導することを要望すると同時に、建築物の態様・性格が児童の健全育成の場の近接地にあることが許されるべきものかどうかにつき、小樽市としても十分に調査・検討して、当該建築物が地域の実情に合わないと判断される場合は、建築について許可しないように要望してきました。しかしながら、ラブホテル規制について市独自の条例も運用基準も持たない小樽市において、市が主体的にこのような「灰色ホテル」を規制することは困難であることが、少しずつ判ってきました。
 建築指導課では「ホテル建築の申請があれば、それが建築基準法等の現行法規に抵触しない限り、その申請を受理し許可せざるを得ない。」と言われました。
 保健所では、児童福祉施設の周囲おおむね100メートルの区域内でのホテル・旅館の設置を規制した旅館業法(第3条3項)は、「かもめ保育園が無認可保育所であるから適用されない。」と言われました。「かもめ保育園は、認可保育所に相当する施設設備を道にも認められており、待機児童の受け入れなど長年認可保育所の補完機能を担い市からも継続して補助金を受けている。児童福祉施設としての認可を求めながら果たせずにいるのは、市の都合によるものである。何より常時40人もの子どもが保育されているその実態に照らせば、当然同法が類推適用されるのがその立法趣旨にかなうのではないか。」との反論も、「無認可施設(保育所)は、児童福祉法第7条の規定による児童福祉施設に該当しないと解され、これが清純な施設環境が著しく害されるおそれがないかどうかについての意見を求める必要はない」とした30年以上も前の行政文書「旅館業法上の疑義について」(昭和51年1月8日環指第1号 厚生省環境衛生局指導課長から兵庫県衛生部長宛)を根拠に退けられました。昭和51年と言えば、第2次ベビーブーム直後、その保育需要の増大から「ポストの数だけ保育所を」と言われて官民挙げて認可保育所の設置を進めていた頃であり、相応の設備・保育体制を有していれば容易に認可保育所として認められた時代です。それでもまだ「無認可」であったのは、きわめて小規模または貧しい設備・保育体制しか有しない施設であったはずであり、かもめ保育園のような現在の「無認可保育園」とは程遠いものであったと思われます。そのような違いも斟酌せずに大昔の行政官庁同士の一片の手紙の文言を盾に取り、実態にそぐわない判断をする小樽市保健所の姿勢には、怒りを通り越してただあきれるばかりでした。
  当該ホテルの建設計画は、かもめ保育園関係者と地域住民の強い反対を知った建築主が建設を断念し、8月6日に株式会社アレンジランドを介して建設中止を伝えてきて、一応の決着を見ました。そのために、住民合意のないホテル建設中止を求めた7月13日付提出の陳情書については取り下げました。しかしながら、保育園の目の前にラブホテルとおぼしき建物が建築されようとしたこの度の非常識な業者の行為に対して、現行法令では規制することができず、行政はただただ無力であったと言わざるを得ません。このままでは、今後同様の「灰色ホテル」の建設が市内で計画されても、相変わらずそれを規制することはできず、住民の良好な住環境ならびに青少年の健全な教育環境を守ることは困難だと思われます。そのため、今回のホテル建設中止をもって問題解決とするわけにはいかず、「灰色ホテル」規制に有効な条例や運用基準の制定を求めて再び署名を募ることとしました。
 当該ホテル建設計画のように建築基準法等の法律に違反しないものであったとしても、地域の実情に応じて然るべき規制を施し市民の良好な生活環境と青少年の健全な教育環境の維持・発展を図ることは、自治体本来の責任であります。小樽市議会におかれましては、今回のかもめ保育園前ホテル建設問題の経緯とそこに浮き彫りになった自治体行政上の課題をご認識いただき、本件について十分なご審議を行い下記の措置を賜りたく、上記署名簿を添えて陳情いたします。


3.陳情の内容
(1) 市民の良好な生活環境と青少年の健全な教育環境の維持・発展を目的として、小樽市独自のラブホテル規制条例または運用基準を制定してください。

(2)(1)の内容については、リゾートホテルやビジネスホテルと称して建築許可を受け、実態はいわゆる「ラブホテル」として運営されるホテルの建築を規制するために有効なものとなるよう十分な調査と審議を行ってください。

(3) 旅館業を目的とする建築物に関する申請および確認にあたっては、当該地域の実情や住民の意見も斟酌するよう申請者・小樽市双方に義務付ける内容にしてください。

 
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